ペットは可なのに障害者はダメ?
※民間賃貸住宅における入居選別の状況(国土交通省HPより)
アパートを貸したくない相手とは?
大家さんの意識調査を見て愕然となる。アパートに障害者を住まわせたくない大家さんは数字を見ても明らかで、高齢者や障害者に対しては4人中3人は「できれば貸したくない」と考えているようだし、シングルマザー(シングルファーザー)に対しても拒否感があるらしい。
どうしてか。
なぜ貸したくないのか?
入居を拒否している理由の1位は「家賃の支払いに対する不安」で、次に「居室内の死亡事故等に関する不安」「他の入居者・近隣住民との協調性に対する不安」「習慣・言葉が異なることへの不安」と続く。
「習慣・言葉が異なることへの不安」については拒否感のある対象に外国人が入っていないため、この不安はおそらく障がい者に対するものだろうと推測する。
不動産会社の立ち位置
アパートを借りる場合、不動産会社を介すると思うが、ここで不動産会社の立ち位置を説明しておく。
あくまで個人的意見だが、大家さんに対して不動産会社が遠慮して貸さないというのも結構あると思っている。
なぜなら不動産会社は「アパートという商品」を大家さんから借りてビジネスを行っているのであり所有していない(注)。
不動産会社としては大家さんの意向を優先するのは当然であり、大家さんが貸したくないと言えば貸せない。
(注:不動産会社がアパートを所有するケースもあるがここでは無視する)
もちろん障害のある人の入居を拒んではいけないとか、障害者差別解消法とか、不動産会社は知っているし、不動産会社が加盟する協会でも入居選別といった差別を慎むよう啓蒙活動は行われているが、不動産会社のビジネスに必要な「アパートという商品」を大家さんから借りている以上、どうしようもない。
貸したくない理由は「不安」だから
先の「入居を拒否している理由」を振り返ってみる。
・家賃の支払いに対する「不安」
・居室内の死亡事故等に関する「不安」
・他の入居者・近隣住民との協調性に対する「不安」
・習慣・言葉が異なることへの「不安」
すべてに共通する「不安」というキーワード。
要するに不安だから貸さない(=課さないほうが無難)という思考。
ただ、こうした不安の原因は高齢者だけが引き起こすものでもないし障がい者だけでもない。もちろんシングルマザーだけでもない。健常者だって家賃滞納するしトラブル起こすし病死することだっていくらでもあるのに、だ。
障がい者に限っていうと、不安の原因は理解不足から来ていると思う。要するに「知らない」とか「偏見」が大きい。私は障がい者の部屋探しを代行するが、偏見の壁は厚いし、知ってもらうことの難しさを感じる。
知らないことは知ってもらえばいい。だから会ってもらえばいい。大家さんが障がい者と面接してくれれば話は早いかもしれない。でも面接に至ることはない。面接すれば多くはOKとなると思うのだが、もしNGの場合は断りづらくなる。ここは無難にやめとこう、となる。
不安を解消するために
家賃の支払いに対する不安や居室内の死亡事故等に関する不安、他の入居者・近隣住民との協調性に対する不安など、こうした不安を解消するために作ったのがくらしケアハウジングサポートというサービス。
内容を説明すると長くなるので詳細は割愛するが、ひとことで言うなら「大家さんの不安はくらしケアがすべて責任を持つからどうか安心してくださいっ!」といった感じだ。
このサービスを利用すれば、障害者に部屋を貸すことの不安の多くは解消し、安心して貸せるようになる。最近は空き家の問題をよく耳にする方も多いと思うが、空き家の半数はアパートなど賃貸物件。家賃を値下げしてもなかなか空き部屋が埋まらないアパートが増えているが、くらしケアハウジングサポートは、そうした空き家問題の解消にもひと役買うだろう。
くらしケアハウジングサポートが目指すもの
実はくらしケアハウジングサポートは障害者にとって、さらなるメリットが出るよう考えられている。
障害者の抱える最大のテーマといえば「親亡きあと問題」だろう。親亡きあと問題とは、障害のあるわが子が親亡きあとも安心して暮らしていけるようにするための準備のことだが、この準備は簡単ではなく時間もかかる。
親亡きあとのわが子の世話を兄弟姉妹や親戚に頼めれば良いが、核家族化の時代だ。現実的ではない。
実際、この問題に対してどう対処して良いか分からず準備もままならず今日を迎えている家族も少なからず存在するが、ハウジングサポートを利用すれば来るべき日に備えることができる可能性がグンと高まる。
とはいえ、くらしケアハウジングサポートはまだまだ開発途中である。なぜなら障害のある方でも精神障害者を対象につくられており、すべての障害者や高齢者に対象を広げるまでに至っていないからだ。もちろん対象を広げるようサービスを充実させていきたいし、サポートの利用者が増えれば食事提供もサポートに加えていくつもり。
だがそのためには多くの協力が必要だと思っている。
私は、くらしケアハウジングサポートの普及により大家さんの意識を変えたいと考えている。このサポートを活用して実際に障害者を住まわせてみれば「最初の不安は杞憂だった」といずれ大家さんは思うはずだ。そうすれば障害者に貸すことの不安がなくなり偏見がなくなる。そういった大家さんをひとりでも増やしていくことで「障害者に貸したくない」という大家さんが減っていく。偏見を持つ人が一人減るワケだ。
住まいは生活の基本というのは言うまでもない。地域包括ケアシステムのおいては中心的役割を担うのが住まいだ。その中心を担う大家さんの意識を変えれば障害者の住まいの問題は大きく改善する気がしている。そして偏見のない社会に少しでも近づくのではないかと考えている。
※タイトルはこの動画から持ってきました。(1分37秒あたり)